(本文/加藤大樹 撮影/ひがけん)
「Listen Only Memory」で「LOM」
――カオナシさんはインターネット文化にどっぷりのイメージがあります。いつ頃からハマりだしたんですか?
ネットに触れはじめたのは小学校低学年くらいかな?
――1994~1996年あたりですか。当時だと結構早いですね。
家にパソコンがあったからだと思います。ゲームが好きだったので、当時はいろいろなファンサイトや攻略サイトを見ていました。
――おお、なんのゲームですか?
特に印象深いのは『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』の攻略サイトですね。モンスターの育成や通信対戦などの作り込みがすごいゲームだったので、深く潜っていました。
――当時は個人サイトですよね。HTML制作の。
そうですね。トップページにアクセスカウンターがあって、キリ番を踏んだら記念カキコをして、掲示板やチャットルームに書き込んで……そういうカルチャーが好きでしたね。
はい。書き込んでいくうちに常連さんと仲良くなっていきました。年齢的にも私は年下なのでかわいがってもらいましたね。小学校6年生のときにはオフ会にも行きましたよ。秋葉原で通信対戦をやるという。
――小6でオフ会!
父と一緒だったので、保護者同伴でしたけどね。高校生になってからはバンドを始めたので、バンドのサイトを作ってネットユーザーとつるむようになりました。
――ネット行動力があるタイプですね。ネットサーフィンだけじゃなくて自分から飛び込んでいく。2ちゃんねるとかは?
2ちゃんねるは怖いところというイメージが強くて……。でも、2ちゃんねるでしか得られない情報もあったので、ROM専でしたね。
――どういうスレをROMってたんですか?
「ドラクエのギャルゲーを作ろうぜ」みたいなスレッドの過去ログを見ていましたね。最初に絵を投稿した人がいて、そこから「このキャラは俺が描く」と決まっていって。テストプレイっぽい画面のスクショくらいまでは追っていました。「こんなことが起きるんだ」と面白かったです。
あとは、とある『ロマンシング・サガ』のスレが大好きでした。スレタイは忘れちゃったんですけど、何かの相談スレだったんですよ。でも、そのスレが「アーケードゲーム板」に立てられていて。おそらくスレ立てを間違えちゃったんですね。
――『ロマサガ』だったら、本来立てる場所は家庭用のRPGについて語る「家ゲーRPG板」とか。
そこから、「あのアーケードゲームがロマサガだったら」という大喜利スレになっていって、読み応えありましたねえ。
――わかります。そういうスレ大好きだったなあ。そういえばカオナシさんも、『ロマサガ』を弾いてましたもんね。
よくご存知で! 加藤さんも『ロマサガ3』 を実況していましたもんね。
――やぶへびだった……。そうそう、11月30日にはソロライブ「フシアナサンとロムの会 ~カオナシが丸腰で歌う夜~」が開催されますよね。これは古のネット民じゃないと考えつかないタイトルですよ。
まさに。そこに触れていただいてありがとうございます。フシアナサン(fusianasan)って、自己開示みたいな意味があるじゃないですか。
――そうですね。2ちゃんねるの名前欄に「fusianasan」と入れて書き込むと自分のIPアドレスが表示されてしまうというトラップでした。
私が「カオナシ」と名乗っているのは、「私は匿名で顔を出さない有象無象だぞ」という自戒みたいなところから来ているんです。今回、オフラインの場所に出て自分の顔、名前、言葉、音楽でコンサートをする。それをフシアナサンと称してみました。
――ステージの上で自らをさらけ出すと。だから「丸腰で歌う夜」なんですね。
ロム(ROM)は「Read Only Member」で、ネットでは書き込みをしないで読むだけの人を刺しますよね。でも、音楽の場合は「Listen Only Member」として、ロム(LOM)と読んでもいいんじゃないかなあと思ったんです。最初は弾き語りでピアノを、本編ではバンドセットでお届けしますので、みなさまぜひ「LOM」ってください。
「亀が好きなんだ!」
――カオナシさんといったら『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』の話は欠かせないと思います。
最初の出会いは幼稚園くらいですかね。デパートにたくさんフィギュアが飾られていて、最初は「この箱の色やばいな」くらいに思っていました。そこからTVアニメを観るようになって、ファミコンの『激亀忍者伝』をプレイしていって……。
――どんどん亀沼にハマっていっている。私たちの世代(長谷川カオナシ、インタビュアーともに1987年生まれ)って、子どものころは結構『タートルズ』が身近にありましたよね。スーパーファミコンの格ゲー『T.M.N.T.ミュータントウォーリアーズ』はよくプレイしました。
名作ですね。私が小さいころ、周りの興味は『ウルトラマン』とか『仮面ライダー』だったんですよ。友だちの付き合いで無理して一緒に「ごっこ遊び」もしたんですけど、あまり好きにはなれなかったんです。でも、『タートルズ』は親しめたんですよね。1990年代後半くらいになると、もうだいぶ日本から撤退していたので、「手に入らないぞ」という感覚も燃えさせられたのかもしれません。
――メジャーすぎない感じが良かった。
2000年代までは我々日本の『タートルズ』ファンには冬の時代でしたね。しかし、2009年から権利がミラージュ・スタジオからニコロデオンという会社に移ったんです。『スポンジ・ボブ』などの会社ですね。それ以降は日の目を見るようになりました。今ではBL層やケモナーにも人気があって、根強いコミュニティもあるんですよ。
――カオナシさんは、2023年公開の映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』や、アニメ『テイルズ・オブ・ザ・ミュータント・タートルズ』に日本語吹替え声優として出演しています。好きが形になっている。
マンタのミュータント、レイ・フィレット役として参加させていただきました。発信するって大事なんですね。「亀が好きなんだ!」と言い続けるべきだと思いました。
この2枚は長谷川カオナシの私物。集めに集めた『タートルズ』グッズだ
レトロゲームが楽曲の血肉に
――それ以外の趣味だと、やはりレトロゲームですか。
そうですね。好きなゲームだと『風来のシレン』、『ロマンシング・サガ2・3』、『ドラゴンクエスト6・7』が好きですね。
――自由度が高い系のゲームが多いですね。
たしかに、自由度があるほうが好きですね。『ドラゴンクエスト7』でも、僕はマリベルが筋肉質じゃないと許せないんです。
――えっ?
マリベルを先頭に立たせて、「しっぺ返し」をするのが僕の基本的な選択だったんですよ。
――相手から食らった攻撃をそのまま敵に返す特技ですね。
でも、ニンテンドー3DSでリメイクされた際になくなってしまって……。イオになっちゃった。それがすごい悲しかったですね。
――なかなかのこだわり派ですね。記憶の中で最古のゲームは?
『ドクターマリオ』ですね。親がプレイするためにファミコンが導入されたくらいです。あとは『アイスクライマー』も遊んでいましたね。
――良いチョイスですねえ。最近のゲームはプレイしていますか?
……私は、2Dおじさんなんですよね……。『スプラトゥーン2』が最後かな。家の中は、自分の安全な世界なんですよ。オンラインゲームって、第三者が私の部屋に入ってくるじゃないですか。私を血まみれにして帰っていくんです。そうしたら本当に汚い言葉が出ちゃうんですよ。なんでゲームでストレスを感じているんだろうって思ってしまう……。
――やっぱレトロゲームですよ、我々世代には。カオナシさんは「ベース・マガジンWEB」 とYouTubeチャンネル で「レトロゲーム喫音堂」という連載をやっていますし。プロのベーシストが語るレトロゲームの音楽やベースラインの話はかなり貴重だと思います。
あんまり数字が回っていないのが悩みなんですけどね。2000年代からバカテク系の「ゲームミュージック弾いてみた」は出尽くしているので、自分が演奏動画を出すのは大丈夫なのかなと思うこともありました。でも、私はテクニック系というよりは、人と人の間を取り持つタイプのベーシストなので、そこで違いは出せているのかなと。

――個人的にはベースラインをフューチャーしているゲームミュージック系動画は珍しいので、もっと長尺で聴きたいという願望もあります! 本連載が自身の活動に活きていると感じることはありますか?
それこそ「ハエ記念日」や「恋する千羽鶴」は結構いろいろな音が入っているんです。バンドアレンジをしても、手数は足りないんですよね。でも、ファミコンって3和音しか音が使えなかった。そう考えると、少ない音でも表現できないことはないんですよね。なので、連載で楽曲を解析してきた経験が楽曲のアレンジに活かされている気はしています。
――すべての経験が血肉になってきている。今回はソロということで新たなチャレンジとなりましたけど、今後挑戦してみたいことはありますか?
「やってみたいな」と思うことは、クリープハイプとして活動して数年ですべて叶ってしまったんです。『タートルズ』に関わることもできましたし、ソロ活動もわがままなキャスティングの上で実現することができました。強いて言えば「生まれ変わったら、2000年代のゲーム実況プレイヤーになりたい」と思うくらい。それくらい充実した、良い人生でした。この恩をお返しする人生にしたいですね。
いわゆる私は、「お前ら」でした。教室のはしっこで「おもしろフラッシュ」の話をしているような学生時代。でも、音楽のおかげで、とても楽しく生きています。何か悩みがある方、コンプレックスがある方に向けて、「こんな私でも元気に生きているぞ」と、何かしらの活力になれたらいいなと思います。今回のアルバム『お面の向こうは伽藍堂』は、そんな私の全体重が乗った良いアルバムになりました。ぜひ聴いてください。
アルバム『お面の向こうは伽藍堂』
発売日:2025年11月26日
価格:3,520円(税込)
仕様:CD+歌詞ブックレット
収録内容:全12曲
1.ねんねんころり
Guitar:チバソウタ/Drums:入交 盾/Bass, Piano:長谷川カオナシ
2.かくれんぼの達人
Drums:松井修司/Bass, Piano, Viola:長谷川カオナシ
3.刹那の夏
Bass, Piano, Viola, Taishōgoto:長谷川カオナシ
4.恋する千羽鶴
Arrange, Programming:simoyuki/Chorus:イボーン, 加藤, 塩, しんすけ, たろちん, はるしげ, 藤原, ルーツ
5.あなたはきっと
Guitar:小野武正(KEYTALK/Alaska Jam)/Keyboard, Chorus:星野菜名子/Drums:矢尾拓也/Bass, Viola:長谷川カオナシ
6.ハエ記念日
Arrange:谷山浩子, 石井AQ/Programming:石井AQ/Piano:谷山浩子/Drums:高橋ロジャー和久/Bass, Viola:長谷川カオナシ
7.金木犀
Arrange, Programming:joe daisque/Guitar:チバソウタ/Keyboard:? meytél/Drums:ゆーまお(ヒトリエ)/Chorus:星野菜名子/Bass, Viola:長谷川カオナシ
8.かの森のペンフレンド
Guitar:伊勢侑生
9.僕の居ない明日に吠え面かきやがれ
Arrange, Programming:フレネシ/Chorus:尾崎世界観(クリープハイプ)/Viola:長谷川カオナシ
10.鶏姫様を食べられない
Baritone Sax:楢﨑 誠(Official髭男dism)/Percussion:普天間瞳/Chorus:長谷川カオナシ
11.ウサギとオオカミ
Guitar:小川幸慈(クリープハイプ)/Sax, Clarinet:馬場レイジ/Piano:モリモトマイ/Drums:ミナカワ/Bass:長谷川カオナシ
12.馬の骨に候
Guitar:坂本陽平/Drums:小泉 拓(クリープハイプ)/Bass, Piano:長谷川カオナシ
ライブ「フシアナサンとロムの会~カオナシが丸腰で歌う夜~」
開催日:11月30日
開場 17:15 / 開演 18:00
場所:日本橋三井ホール
前方指定席:5,500円(税込)
後方スタンディング:5,000円(税込)
未就学児童入場不可(小学生以上チケット必要)
「前方指定席」は17:40より入場開始
ドリンク代別
各種詳細は公式サイトにて
https://www.creephyp.com/
https://www.creephyp.com/feature/hasegawakaonashi_2025
ライブツアー「フシアナサンとロムの板」
~東京・府中スレ~
日程:2026年2月27日
開場 17:45 / 開演 18:30
会場:東京 府中の森芸術劇場 どりーむホール~愛知・名古屋スレ~
日程:2026年3月1日
開場 17:30 / 開演 18:00
会場:愛知 中日ホール~大阪・西梅田スレ~
日程:2026年3月2日
開場 17:00 / 開演 17:30
会場:大阪 サンケイホールブリーゼ
長谷川カオナシ・サイン入りチェキプレゼント
■応募要項
・応募期間:2025年11月30日から2025年12月14日まで
・内容:長谷川カオナシ・サイン入りチェキ(チェキの指定はできません)
・当選人数:4名様
・日本国内にお住まいの方に限ります■応募方法
・推しタイムズ公式X(旧:Twitter)をフォロー
・ハッシュタグ「#長谷川カオナシチェキプレゼント」を入れて記事の感想をポスト
長谷川カオナシ。1987年9月23日生まれ。東京都出身。2012年にクリープハイプのベーシストとしてメジャーデビュー。2025年11月26日にアルバム『お面の向こうは伽藍堂』でソロデビュー。『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』愛好家としても知られ、2023年公開の映画『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』や、配信中のアニメ『テイルズ・オブ・ザ・ミュータント・タートルズ』ではレイ・フィレット役としても出演。「ベース・マガジンWEB」とYouTubeチャンネルで「レトロゲーム喫音堂」を連載中
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