●「ネットで洗濯.com」運営の「403」岩本弥子さんインタビュー
●今回の振り返り
――あらためて本日はありがとうございます。今回、ハム太郎、白うさぎ、赤ちゃん人形と、3点のぬいぐるみをクリーニング・リペアしていただきました。
まずハム太郎は生地がしっかりしていましたので、表面の汚れや目の染み抜き、綿の交換を中心に対応しました。非常に弾力のある綿を入れているため、抱きしめたときに自然と体に馴染むと思います。綿はどうしてもヘタリやごわつきが出てしまうものですので、交換すると一気にリフレッシュした印象になりますね。
――綿に関しては、「綿詰め」と「綿交換」というふたつのサービスがあります。こちらの違いはなんでしょう。
「綿交換」は中身をすべて新しいものに替え、見た目はふんわりとボリュームが出て、重量も軽くなります。一方「綿詰め」は、中の綿を抜かずに追加する方法です。綿も思い出の一部だから残したい、という方におすすめしていますね。
――綿は残したいけれど、ボリュームは出したいという場合に使う。
そうですね。思い出を残しつつ、既存の綿もしっかり洗浄していますので、衛生面もご安心いただけます。オプションとして汗抜き加工、防ダニ加工、カビ取り加工などもご用意していますよ。
――白うさぎはいかがでしたか。
白うさぎさんは、約30年前のものとは思えないほど生地がしっかりしていて、ほつれも首の一部のみでしたので、状態は非常に良好でした。通常はほつれ部分を一周縫いますが、今回は強度を高めるため二周縫っています。日焼けなどで生地や繊維が弱っている場合は、縫うこと自体が難しいケースもありますね。また、今回はビンテージ品で洋服を着用しているため、取り扱いはとてもデリケートで、職人による手洗いで対応しました。
――ハム太郎は専用のクリーニング機械で洗っていましたけど、生地の劣化やほつれがある場合は手洗いになるということですね。
はい。毛足が長いタイプでしたので、エアーで絡まりをほぐしながら乾燥させ、ブラッシング後にスチームアイロンで毛並みを整えました。お洋服も染み抜きを行いましたが、生地が弱っていたため、溶剤は最低限に抑えています。過度に使用すると色抜けや破損のリスクがあるためです。
――洋服も見違えるようにきれいになって驚きました。赤ちゃん人形についてはいかがでしょう。
口や眉毛のパーツがフェルトで接着されており、日焼けによる劣化や変色が見られましたので、手洗いでクリーニングしました。その後、部分的に染み抜きをしています。強い溶剤を使うと色が抜ける恐れがあるため、濃度を調整しながら蒸気を当て、小筆で丁寧に処置しました。
――変色が目立っていたので、効果がはっきり分かりましたね。
染み抜きは技術力が特に問われる工程なんですよ。白うさぎさんとお洋服と同じく、ゴム紐の交換なども行っていますので、全体の印象はかなり変わったと思います。
――今回は全体のクリーニング・リペアをお願いしましたけど、靴や髪飾りなどパーツ単位でも依頼できる点が魅力だと感じました。
「ぬいぐるみクリーニング」というと、丸洗いや綿交換をイメージされる方が多いと思います。ご相談いただければ個別に対応することも可能ですよ。
●「ぬいぐるみ」は替えがきかない
――「ネットで洗濯.com」を運営する「403」についてお聞きできればと。
「403」は1992年創業で、当時から「できない」ではなく「できる方法を考える」という姿勢を大切にしてきました。衣類だけでなく、靴、スーツケース、チャイルドシート、キャンプ用テント、登山用品など、60種類以上のアイテムを取り扱っています。その30年以上の技術を、ぬいぐるみクリーニングにも応用しているんですよ。
ぬいぐるみだけでなく、衣類や登山用品などを中心にクリーニングを行っている
――その蓄積が強みなんですね。
お客さまが困っているのであれば、できる限り応えたい。その思いが原点です。
――ぬいぐるみクリーニングの依頼はどのくらいありますか。
月間約800体、年間約1万体ほどです。2023年にXで「しろたん」のクリーニング投稿をしたことが転機ですね。話題となり、依頼が2倍、3倍に増えました。
大きな大きなしろたんのクリーニングさせて頂きます。
大切なぬいぐるみを安心して預けられる「https://t.co/Az3uzZSTSd」にお任せください。
職人が1点1点丁寧に施工させて頂きます。…
ご注文はこちらから https://t.co/NSyq9LnCRZ pic.twitter.com/g2FllHLTZP
— ネットで洗濯.com【大切な1点を任せられるクリーニング店】 (@403_net) June 14, 2023
――「ちいかわ」のうさぎがクリーニングされている姿が「脱出ポッド」と呼ばれてバズったり、ハチワレにスチームアイロンを当てている姿も大きく話題になったりしました。SNSでの投稿がかなり熱心ですね。
— ネットで洗濯.com【大切な1点を任せられるクリーニング店】 (@403_net) July 12, 2024
ぬいぐるみクリーニング職人🐈#ぬいエステ#ハチワレ#ちいかわ pic.twitter.com/ONZnTY0dw9
— ネットで洗濯.com【大切な1点を任せられるクリーニング店】 (@403_net) October 6, 2023
かわいいぬいぐるみと、真剣な顔の職人というシュールさが好評でした。宅配の依頼は国内外から届きますけど、工場での作業は見えませんよね。持ち主からしたら、大事なぬいぐるみがどう取り扱われているのか、目に見えないと不安かなと思ったんです。なので、より身近に感じ、安心して依頼いただけるように、職人とぬいぐるみを一緒に写して投稿しているんですよ。
――やはり衣類や靴以上に、愛情を持ってぬいぐるみに接している方が多いですからね。
そうなんですよ。片時も離れたくないという方が非常に多いです。ぬいぐるみが届いたあと、「うちの子は元気ですか?」と問い合わせを送られる方が多かったんですよ。なので、個別にお写真を撮って状態を伝えていました。いまは「うちの子もSNSで投稿してください」と言われることもありますけど、なかなかすべての子を撮影するのが難しいので、ランダムで紹介しています。
――宅配クリーニングサービスなので、基本は宅配便でぬいぐるみを送るじゃないですか。でも、「ダンボールにぬいぐるみを入れるのは抵抗があるので、直接店舗まで持ってきた」というお客さんもいるんですよね。そういう、持ち主だからこその視点に気付かされました。
「この汚れは思い出だから落とさないでほしい」とか「このほつれやアホ毛はチャームポイントなのでそのままに」という声は多いですね。
ぬいぐるみの髪飾りや洋服、靴をリペアしてほしいという依頼も多く届く
――あえて汚れを落とさないという、ぬいぐるみだからこその選択肢がある。
「汚れを落としたい」「きれいにしたい」という気持ちがあるからクリーニングに依頼すると思います。でも、ぬいぐるみは衣類とは違うんですよね。
――わかります。同じぬいぐるみが売っていたとしても、それを買って交換すればいいというわけではない。
そうなんですよ。持ち主にとってはオンリーワンなので、その子しかいない。「別のもの」という概念がないんですよ。たとえば同じ「ピカチュウ」のぬいぐるみが届いても、ぜんぜん違うんですよ。形や表情に個性があります。頭が汚れていたらよく頭をなでられていただろうし、腕の下がへこんでいたら抱きかかえられていたんだろうなと、愛された証が出ますね。替えがきかないものなので、だからこそ集中して一体ずつ丁寧に取り扱っています。
●国を超えるぬいぐるみへの愛情と納期へのこだわり
――依頼が多いぬいぐるみのサイズは?
50~60センチ程度が中心です。さきほどのハム太郎くらいのサイズが多いですね。小さいものは指人形くらいのサイズから、2メートル超えの子がチャーター便で届くこともあります。本当に幅広いですね。
――すごい……!
あとは、海外からクリーニングのためだけに日本旅行として来るという方もいます。月に数十名くらいは海外の方がお越しになりますし、国際便でも届きますね。中国や台湾、韓国などアジア圏から、オーストラリアやカナダなどからお見えになる方もいます。欧米では、一ヶ月スパンで休みを取られることもあるじゃないですか。なので、長い休みを利用して立ち寄っていただくことがあります。
――ぬいぐるみへの愛情は世界共通ということですね。ぬいぐるみを扱い始めたのはいつごろから?
1996年ころですね。でも、当時は同時期に始めた宅配テントクリーニングの方が主力でした。
――テントが多いのは、やはり山梨県という土地柄ですか?
そうですね。山梨だけじゃなく、近隣の長野や静岡など、周辺にキャンプ場が多いんですよ。キャンプの帰りにテントを置いていく。もともとは弊社の会長がキャンパーで、自分のテントをメンテナンスして洗っていたのが始まりなんです。特に都内のキャンパーはテントを洗ったり干したりする場所がないじゃないですか。「絶対に困っているキャンパーがいるはずだ」ということで、宅配のテントクリーニングをスタートしたんです。
――1996年にその宅配クリーニングサービスとは先見の明がすごい。近年は「推し活」や「ぬい活」も盛んで、ぬいぐるみを持ち歩く人が増えているので、さらにクリーニングの需要が増えそうだなと感じています。
やはりぬいぐるみと出歩いたり、食べ物と一緒に撮影したり、抱っこして持ち歩いたりすると、汚れや食べ物の染み、汗がつくことが増えてしまう。そういったクリーニングの依頼は多いので、「推し活」ブームに後押しされている実感はあります。また、一緒に出歩くということは、次の予定も決まっているという方が非常に多い。なので、クリーニングの納期についても特にこだわっています。
ぬいぐるみの仕上げにスチームアイロンは欠かせない。ふんわりなめらかに
――片時も離れたくないけど、仕方なくクリーニングに出すという方もいますよね。
クリーニングのみなら最短3~6日、リペア込みでも1~2週間。特急オプションでは翌日返送も可能ですね。長期間お預かりすることは、お客さまの気持ちに沿わないと考えています。
――それだけの納期を徹底できるのも、職人さんの技術があってこそですね。クリーニング・リペアを担当されている、いわゆる「職人」は何名いるのでしょうか。
国家資格を持った「クリーニング師」が12名、リペア職人は10名在籍しております。
――さきほどの「しろたん」の投稿でクリーニングを担当していた志村工場長は「しむたん」と呼ばれて愛されていますね。
本当にお客さまに支えられているなと実感しています。「しむたん」の愛称もお客様がSNS投稿のコメントで付けて頂きました。クリーニング後にレビューを書いていただく方もいますし、お礼状を送っていただく方もいるんですよ。お手紙やぬいぐるみのイラストを付けて、お子さまから大人の方までたくさん。それらはすべてファイリングして大切に取っています。
――(ファイリングしたノートを見せてもらいながら)いやー……これは、これはうるっときますね。みなさん愛情を持っているのがすごく伝わってくる……。今回は本当にありがとうございました。
私たちは「思い出はそのままに、汚れだけを落とす」を信念にしています。これからも一体一体に真摯に向き合っていきます。お困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
岩本憲さん、岩本弥子さん、ほんとうにありがとうございました!
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汚れを落とす。綿を替える。ほつれを直す。
作業として書けばシンプルだが、その裏側には「思い出は残したい」という持ち主の想いがある。
だからこそ、すべてを一律に“新品同様”へ戻すのではなく、その子らしさを見極めながら手を入れていく。
同じキャラクターのぬいぐるみはあっても、同じ子はいない。
頭のへこみも、腕の擦れも、色あせも、全部が持ち主と刻んできた時間の証だ。
ふわりと軽くなったぬいぐるみを抱いたときの感触は、きっと持ち主にとっても特別なものになるはず。
「推し活」「ぬい活」が広がるいまだからこそ、大切なぬいぐるみとこれからも時間を重ねていきたい。
その一歩を支えているのが、「ネットで洗濯.com」だ。
















