【現地レポ&インタビュー】山梨の“ぬいぐるみクリーニング店”に行ってみた! – 人形3体持参して大人の工場見学in「ネットで洗濯.com」

◆灰うさぎを白うさぎへ

通常はクリーニングを行ってからリペアに入るが、今回の白うさぎは首元のほつれが大きく、このまま洗うと破損が広がる可能性があるという。そこで、先にリペアから着手する流れとなった。

中を確認すると、詰め物にはオレンジ色のスポンジが使用されているが、これは……?

●岩本弥子さんワンポイントアドバイス

これは昔のぬいぐるみに見られる特徴のひとつで、スポンジの有無からおおよその年代が推測できます。かつては綿が高価だったため、代用品としてスポンジが使われていた可能性がありますね。最近ではほとんど見かけないです

まずは首元の裁縫から。

白うさぎぬいぐるみの特徴として、顔はカーブがかかり、目はくぼみ、鼻は立体的に出ている構造になっている。多くのぬいぐるみは顔内部から糸を引いて立体を作っているため、顎下を安易にいじると全体のバランスが崩れてしまう。形状を維持しながら強度を上げるには、縫いのテンションを緻密に調整する必要があり、まさに職人技だ。

首元がしっかりと!

◆首以外の劣化は軽微

約30年ものの白うさぎ。表面には黒ずみが見られるが、生地そのものの状態は良好とのこと。

●岩本弥子さんワンポイントアドバイス

状態が良いのは、日光にあまり当たっていなかったからだと思います。ずっと部屋に置いていると、電球の光でも焼けることがあるんですよ。箱や物置に保管していると紫外線や電球による劣化を防げますからね

リペアを終えたら、洋服は可能な限り脱がせて手洗いへ。エプロン部分は構造上そのままにして、慎重に作業を進めていく。30年分の汚れを落とす工程だ。

無理に脱がせると破損にもつながるため、今回はエプロンを装着したままクリーニングへ

服を脱がせることで元の毛色がよくわかる

ぬいぐるみの素材と洋服の生地、両方を洗っていくため、想像以上に難しそうな作業だ

生地にはけば立ちが見られるため、やや硬めのブラシを使用。ブラシは約8種類を使い分けているという。素材や毛足の長さに応じて最適なものを選ぶ。

ハム太郎のときより硬いブラシで毛をほぐしていく

水の色からも汚れがどんどん落ちているのがわかる

ちなみに、白うさぎや赤ちゃん人形は、クリーニング作業の内容的に1日で完了させるのは難しいとのことで、当日はここでお別れ。後日、しっかりとクリーニングしてもらった。

毛の絡まりはエアーで丁寧にほぐし、乾燥後にブラッシング。ほぐす、整える、乾かす。その工程を繰り返しながら、少しずつ本来の姿を取り戻していく。

最後はスチームアイロンで仕上げ

◆白うさぎビフォー・アフター

ビフォー
アフター

見違えるほどの白さ! ここまで毛並みがきれいになるのかと驚くとともに、洋服のクリーニング具合も素晴らしい。こんなに汚れが落ちるのか、という衝撃を受ける。

ビフォー
アフター

ビフォー
アフター

スポンジが見えていた首も

リペアされ、まったく目立たなくなった

白い毛はもこもこさを取り戻し、洋服もふわっとかわいらしく。なにより、中身が露出してしまうほど損傷していた喉がリペアされたことがうれしい。首元はしっかりと糸で結びつけられ、座らせてもぐらぐら揺れ動くこともなくなった。

◆白うさぎ持ち主からのコメント
ここまで白くなるなんて驚きました。まさか洋服もきれいにしてくれるとは思っていませんでした! クリスマスにサンタさんからもらったうさちゃんなので、とても嬉しいです。首もなおしてくれてありがとうございました!

◆思い出の赤ちゃん人形

右目が外れていた赤ちゃん人形については、なんと代替となるパーツをすでに用意してくれていたという。持ち主にとっては分身のような存在だけに、これはうれしい。

●岩本憲さんワンポイントアドバイス

この人形は、眉毛がフェルト生地で洋服の装飾部分が接着で固定されているため、洗濯機での洗浄は難しい。今回は手洗いを中心に、慎重に作業を進めていきます

汚れというよりは、長年の経年による“変色”が主な課題とのこと。ハム太郎や白うさぎ以上にデリケートな素材のため、使用するブラシもより細かく柔らかいものを選択。繊維や表面を傷めないよう、洗浄液をじっくりと染み込ませ、浮かせるように汚れを分解していく。

けっしてガシャガシャと洗うことはせず、なでるように押し込み洗っていく

洋服を脱がせると、元の色と変色した部分の差がはっきりとわかる。年月が刻まれているのが一目瞭然だ。

洗浄液で汚れを浮かせたあとはブラッシング

●岩本憲さんワンポイントアドバイス

約40年分の汚れが溜まっているため、結構手強いですね。でも、きれいになると思います!

しっかりと、ていねいに、汚れを浮き出すように、ゆっくり押し込みながら洗っていく。

染み抜きは、筆を使って溶剤を丁寧に塗布。温度によって反応を促すため、蒸気を当てながら少しずつ進めていく。汚れを浮かび上がらせ、吸い取る。強い薬剤で一気に落とすのではなく、素材と向き合いながら慎重に整えていく工程だ。

薬剤を付けすぎると大変なことになるため、慎重に塗っていく

染み抜き作業はじっくりと時間をかけて行っていくもの。今回は汚れの落ち具合がわかるよう、特別にほっぺた部分だけの作業を見せてもらった

40年分の時間をまとった人形が、少しずつ本来の表情を取り戻していく。

最後はスチームアイロンで形を整える

◆赤ちゃん人形ビフォー・アフター

ビフォー
アフター

ビフォー
アフター

ビフォー
アフター

この赤ちゃん人形が一番ビフォー・アフターの様子がわかりやすいのではないだろうか。しっかりと汚れと染みをクリーニングしてもらい、見違えるような白さに。すっかり損傷してしまった目玉も似ているパーツを付けてくれたことによって、まるで生まれ変わったかのようだ。

次ページでは、今回リペアなどを担当してくれた岩本弥子さんにインタビューを実施。クリーニングにかける想いをたっぷりと語ってもらった。

◆赤ちゃん人形持ち主からのコメント
約40年前に自分の写真から作ってもらった人形なので、自分の分身みたいな子です。こんなにきれいにしてもらえるとは思いませんでした! クリーニングされた写真を両親にも見せました。当時、人形制作の懸賞に応募した母が昔の写真を発掘してきて、うれしそうに語っているんですよ。家族の思い出をひとつ、つくっていただき本当に感謝しています!

著者:記事一覧ページ
アバター画像

加藤 大樹

かとうだいき。1987年9月11日生まれ。茨城県出身。2007年、ニコニコ動画でゲーム実況グループ「ゆとり組」として活動。ゲーム実況をきっかけに出版の道へ進み、著書『プリキュアシンドローム!』(幻冬舎)などを上梓。WEBメディア「マイナビニュース」の編集者・ライター・広告制作ディレクターなどを経て、現在フリー編集・ライターとして活動 お仕事のご連絡はこちらまで kato.daiki.po@gmail.com kato@subculture.co.jp