
20周年を迎えた株式会社TENGAは、6月20日〜25日まで原宿ハラカドにて展覧会「松本光一展」を開催。初日には、代表取締役社長・松本光一氏が登壇するトークショーも行われました。
松本氏はもともと車の整備士として働いていたものの、半年間の給料未払いにより退職。その後中古車販売の営業として従事しますが、生活が安定してきた段階で「ものを作りたいという思いが内側から湧き上がってきた」と語ります。しかし長期間お金がない状態で過ごしてきたので、何が売れていて何が流行しているのかが分からず、さまざまなお店で地道にリサーチを重ねていました。
松本氏は、ある日何気なく立ち寄ったアダルトショップで、強い違和感を覚えたといいます。そこに陳列されていた商品には、ブランド名もバーコードもなく、製造元や保証の記載もありませんでした。完全にアンダーグラウンドなマーケットに、不安を感じたのだそうです。
また、後ろめたさを感じる商品パッケージにも嫌悪感があったという松本氏。「性は人間の根源的な欲求なのに、性にまつわる商品が自らを卑わいなもの、わいせつなものとして扱っていました。だったら自分が、もっとポジティブでフレンドリーな、新しいカテゴリーの商品を作ろうと決心しました」とコメントしました。
その後、松本氏は約1年半にわたり研究と試作品の制作に没頭します。しかし当時は、「自分は誰にも貢献していないのではないか」「ゴールの見えない努力はとても苦しい」と感じる日々が続きました。そのような中、一度だけ大手企業にプレゼンする機会が訪れます。その場で、販売の約束を取り付けることができたのは、大きな転機でした。
当時は商品が5,000個売れればヒットという時代でしたが、TENGAは1年で100万個以上を売り上げます。今では世界各国に展開され、国境を越えて愛されるブランドへと成長しました。
当時を振り返り、松本氏は「人生には順調にいかない時、辛い時が必ずあると思います。しかし、そのときに感じたことが、後からとても大切な意味を持つのだと気づきました。この時期に得た気づきは3つあります。1つ目は、ものづくりの喜び、そして人に喜んでもらえるという幸せ。2つ目は、人の根源的な欲求を大切にするということ。そして3つ目は、思いやり。この3つに気づくことができたのは、何よりの財産です」と語ります。
松本光一氏のこれからの展望
現在、株式会社TENGAはモデル・女優の水原希子氏をアンバサダーに迎え、女性用ヘルスケアブランド「iroha Healthcare(イロハ ヘルスケア)」をスタート。また、障がいのある方の就労継続支援施設「able! FACTORY(エイブル ファクトリー)」の取り組み、さらに原宿ハラカド2階には「TENGA LAND(テンガランド)」をオープンと、幅広く展開しています。
トークショーの最後に松本氏は、「私は25年前にすべてを失いました。しかし、そこから人に支えられて、ここまで来ることができました。これからも、もっと正直に楽しい商品を一緒に作っていきたいです」と話し、イベントは幕を閉じました。
展覧会の見どころ
展覧会場のギャラリールームでは、松本氏の思考の原点ともいえる初期のTENGAデザインスケッチや、当時実際に使用していた「開発デスク」の再現が展示されています。
また、ギャラリーに隣接した全長約8メートルのアートストリートには、TENGA誕生から20年間の軌跡が凝縮されており、松本氏の歩んできた物語とブランドの進化を感じることができます。
TENGAが築いてきた20年の歩みと、松本氏の情熱に触れることができる貴重な機会に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。