(本文/加藤大樹)
前編はコチラ
初挑戦な『私たちはカケちがっている』
――2024年10月から新連載『私たちはカケちがっている』がスタートし、第2巻が2025年11月に発売されたばかりです。本作を作るうえで意識しているところは?
『私たちはカケちがっている』は“絵で話さないといけない”作りにしているんです。絵がキラキラしていないと、カケちがっているふたりのギャップが生まれない。かといって顔を作り込みすぎると、この子たちらしさが消える。だから表情にはとても気を遣っています
――綺麗なビジュアルと、カケちがっているギャップ。その両立ですね。どういう着想から生まれた作品なんでしょうか。
もともとは、双子の女の子に翻弄される男の子の話を描きたかったんですよ。そのネタをTwitter(現:X)に載せたら、担当さんから「違う」というリプが来たんです。そこからひねっていきました。
――連載用のネタとしてアップしたんですね。
私は「これでいけるだろ」と思っていたんです。双子のお姉さんは良い子キャラ、妹は裏で繋がっている小悪魔キャラ。でも、「妹が強すぎる」と言われてしまって。
――妹のキャラが立ちすぎる。
なので、妹を小学生にして今のカンナちゃんが生まれました。その妹の行動を真に受けて頑張ってしまう高校生のお姉ちゃん・紫乃原葉月も、そこから決まりました。この2人はすんなり決まったんです。
――最後に男の子を作ったんですね。
最初は、女の子に翻弄されてツッコミを入れちゃう普通の見た目の子を考えていました。それもフックが弱いということになって、「男の子もイケメンだったらどう?」と提案されてネームを作ってみたんですよ。そうしたら、今までの自分にない動きをするキャラクターになって、一気にまとまりました。
――ふたりとも作中で“はっきり美男美女扱いされている”のも珍しいですよね。両想いの美男美女だからそれで終わってしまいそうだけど、カケちがっていくから物語になる。
ラブコメなので、どちらかは読者視点に近くなくちゃいけないと思い込んでいたんです。でも、今のラブコメはそうじゃないと担当さんが教えてくれました。この2人を“ずっと見ていたい”という楽しみ方がある。疑似体験じゃなくて壁になりたいんだなって。
――尊さに全振り、ですね。
そうそう。ラブコメは結構描いてきたけど、今回は“初挑戦”の気分です。
――腑に落ちました。カケちがってはいるけど、すれ違ってはいない。だから安心して読める。本編でも「ライバル登場か?」と思ったらすぐ誤解だとわかる、あのソワソワしない楽しさがあります。
悲劇的な展開はあまりやらないようにしています。めちゃくちゃなドラマはいらない。ただ日常をずっと見せたいんです。幸せになってほしくて。
――まさに“壁”ですね。ストーリーは基本一話完結で、大ゴマのカケちがいがメイン。どう組み立てているんですか?
ネームを書くとき、「ここでこうしよう」はあまり考えていません。担当さんとネタ出しして、そこからキャラがどう動くかを見ていく感じです。
――これまででお気に入りのカケちがいは?
お弁当箱のさくらんぼですね。これまでのキャラクターだったら「1個だけ!?」とか突っ込んじゃってたと思うんですよ。でも、このふたりは受け入れてしまう。印象深い回で「この子たちでいける!」と思いました。
――突っ込まずにそのまま進む。このシーンはSNSでもバズっていましたね。
たくさん見てもらえて嬉しいです。少しずつ距離が縮まっていく感じを、私も楽しみながら描いています!
憧れの女子のお弁当の中身は…(0/6) pic.twitter.com/SFEDJHxVE3
— みなもと悠 単行本2巻11/7発売 (@minamotoyou) April 8, 2025
シールとたま
――みなもとさんはSNSで話題になることも多いですよね。これまでで印象に残ったことは?
最初にメイド型アンドロイドの話で話題になって、そこから「おひとりさま女子ちゃん」をたくさん見てもらいました。『明日のよいち!』の頃は「みなもとさんのファンはどこにいるかわからない」と言われていたんですよ。
#これでフォロワーさんが増えました#おひとりさま女子ちゃん pic.twitter.com/hn8Z9JwA5x
— みなもと悠 単行本2巻11/7発売 (@minamotoyou) July 16, 2025
――ファンはいるけど姿が見えないということですか?
ブログ時代だったんですけど、声を上げる人が少なかった。でも、サイン会告知をしたらサイトのサーバーが落ちて瞬殺。「どこにファンがいるの!?」ってよく言われました(笑)。
――潜んでいたんですね。
そうなんです。でも今は直接応援の声が届きます。特にシールを作るようになってから、シールコレクターさんの熱いメッセージが届くんですよ。
――みなもとさんといえばシールのイメージもあります。ここまでシールにハマったきっかけは?
最初は幼稚園のころですね。男の子の友だちから「ビックリマンシール買いに行こう」って言われて、スーパーに買いに行ったんですよ。一人一枚ずつ買って、私は悪魔シールが出て、友だちは十字架天使ちゃんを引いたんです。銀色に光ってるし可愛い女の子だし、ずっと「交換して!」「いやだよ!」というやり取りを繰り返しました。その時から十字架天使ちゃんは憧れの女の子なんです。
――そのときのシールへの憧れが根底にあるんですね。
大人になってからも運試しでビックリマンチョコを買っていたんですけど、数年前に初めて十字架天使ちゃんが出たんです。野球してるバージョン! そこから興味が再燃して、自分のキャラをシール風に描いたら面白いんじゃないかと思って。
――いまでは自身のイラストをたくさんシール化していますね。最初にシールを作ったのはいつごろですか?
2020年か2021年ですね。当時連載していた『ハケンの忍者アカバネ』が最初のシールです。その後「おひとりさま女子ちゃん」をビックリマン風に描いたら「商品化してください」と声が上がって、印刷会社さんに頼んで作りました。自分の絵がキラキラのシールになって、みんなも喜んでくれて、本当に感動しました。今はYY-FACTORYさんと一緒にシールを作っています。
――これまでどのくらい作ったんでしょう?
おそらく450枚以上ですね。
――すごい……! シール界は奥が深いですよね。デザインも技術も幅広い。
自作シール界隈は熱量がすごいです。アニメーションするシールを作る人もいるし、印刷会社さんが「こういう技術があります」と提案してくれる。48ミリの小さなキャンバスで戦っているのが面白いですね。
――シール以外の最近の“推し”はありますか?
時代劇が小さいころから好きです。いまも母と時代劇専門チャンネルを観ています。特に好きなのは『必殺シリーズ』。『明日のよいち!』も時代劇好きだからこそ描けた作品ですね。
――たしかに侍や忍者など、時代劇を思わせる要素がよく出てきますね。
あとバンドだと「THE ALFEE」と「たま」が好きですね。たまは掘れば掘るほど楽しい。かなりハマっていて、pixivでファンアートを描いていたこともあります。原田高夕己先生の漫画『「たま」という船に乗っていた』を読むと、たまのことがよくわかりますよ。
――みなもとさんがよくリポストしていたので、僕もたまについて調べていた時期があります。
ありがとうございます! たまがブレイクしたとき、ギター・ボーカルの知久寿焼さんが“自分たちの音楽はアンダーグラウンドだ”と発言していたのが心に残っているんですよ。「百人のうち三人がボクたちの音楽が本当に好きで、あとの九十七人が“そんなに言うならちょっと聴いてみよう”ってレコードを買ってるってことです、たぶん。もし、百人が百人たまをいいと思ったら、気持ち悪すぎます」とインタビューで語っていました。売れても足場が揺らがないという姿勢がすごい。生き方として勉強になりましたね。
――人生の基盤になっている。それでは最後にファンの方に向けてのメッセージをお願いします。
わたしが好きなことを続けられているのはひたすら、読んでくださったりお手に取ってくださったり、サポートしてくださったり、一緒に面白いことを考えてくださったり、いろんな形で応援してくださる方たちのおかげです! みなさんに恩が返せるような自分でありたいと思います……! これからもなにとぞよろしくお願いいたします! 今回はこのような機会を、本当にありがとうございました!!
みなもと悠。12月15日生まれ。神奈川県出身。2002年に源ゆう名義で『ガンガンパワード』(スクウェア・エニックス)にて読切『フェイク』を発表し漫画家デビュー。2006年より名義をみなもと悠に変更し、TVアニメ化された『明日のよいち!』を始め、『かみさまドロップ』、『ハケンの忍者アカバネ』などを執筆。現在はWebコミック誌『チャンピオンクロス』(秋田書店)にて『私たちはカケちがっている』を連載中。突如シール集めにハマったことをきっかけに、YY-FACTORYとの共作や個人制作で自作シールも制作している/Small>
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