【特集】コスプレイヤー・えなこに「願いを込めて」――写真家HASEOが描く、魂の物語

写真家・HASEO氏による個展「願いを込めて」が、2025年4月29日から5月4日まで、東京・銀座の大黒屋ギャラリーにて開催。「美しさの先にある“真実”を写し出す」――そう語るHASEO氏の創作哲学が、全身で感じられる展示会。(取材・写真=ひがけん)

名古屋を拠点に活動するHASEO氏は、2018年にはWPC(ワールド・フォトグラフィー・カップ)で日本人初のメダルを受賞、現在は世界的写真サイト「OneEyeland」で世界ランキング1位にも輝くなど、国内外で高い評価を得ている写真家。彼は合成を使わず、ロケーションにこだわった圧倒的な世界観を構築するスタイルが特徴で、現実を超えるような幻想美の中に“人間のリアル”を潜ませている。

そんなHASEO氏の作品は、“ただ美しいビジュアル”では終わらない。彼が創る作品の一つ一つに明確な「ストーリー」が存在しており、そこに自身の感じた理不尽、葛藤、希望、願いを注ぎ込んでいる。今回のテーマ「願いを込めて」にも、社会や人間に対する問いかけが込められているのだという。

「ただ美しいだけじゃ人の心は動かせない。本当に伝えたいことを撮らなければ、何も届かない」

同個展で特に注目されているのが、SNS総フォロワー数は500万人を超える日本のトップコスプレイヤー・えなことのコラボレーション。マンガ誌のグラビアを始め様々なメディアで活躍している、えなこに対して多くの人が「“コスプレ”“セクシー”などのイメージを持っているのではないか」と語るHASEO氏。露出を排し、衣装のラインや表情、空気感だけで勝負したいという思いから、えなこを1人のモデルとして迎え入れた。

撮影当日は嵐の中、睡眠もままならぬ状況で現地入りし、明るく振る舞う彼女のプロ意識に、HASEO氏、ならびに撮影スタッフは心を打たれたという。そして「服を着ていても、彼女の魅力は伝わると確信していた」と語るHASEO氏の言葉通り、彼女の内面がそのまま映し出された作品が完成し、約20点もの作品が展示されている。

特に印象深い作品は、雪が舞う中で撮影された一枚。極寒のロケにもかかわらず、えなこは自ら上着のコートを脱ぎ、笑顔で雪景色に溶け込んだ。その写真は一切レタッチを施していないありのままの「えなこ」だと話すHASEO氏。そして「彼女はこちらの意図を即座に察知してくれる“本物のプロ”」と語り、最低限のシャッター数で最高の結果を生み出せたと絶賛していた。

会場には、えなこ以外の被写体を含め、約60点の作品が展示。すべての作品が「願いを込めて」というテーマに沿い、細部まで緻密に構成されているという。例えば「最期の晩餐〜神を裏切ったのは全人類〜」や「七つの大罪」といった作品は、制作期間2年を費やして完成したもの。一方で、「白雪姫」をモチーフにした作品は、企画から撮影までをわずか1日で撮りきったという。それらの構図やライティング、被写体の表情、配置されたモチーフそのすべてに意味があり、見る角度や心境によって解釈が変わる。静かにたたずむ作品の前で、思わず言葉を失う来場者も多かった。

同個展の開催にあたって、クラウドファンディングによる支援も行われ、総額5,367,350円が集まったといい、この数字は、HASEO氏のビジョンに共鳴した多くの人々の「願い」の結晶でもある。そして、HASEO氏は、「日本のコスプレイヤーは、もっと海外で評価されるべき」と口にしており、今後はオリジナル作品を世界に向けて発信する展望を明かした。

「写真はただ美しいだけでは足りない。人に何かを伝えられてこそ、本物になる」――そう語るHASEO氏の信念を、ぜひその目で確かめてほしい。

HASEO 個展「願いを込めて」開催概要

展示期間:
4月29日(火)13:00〜18:30
4月30日(水)〜5月2日(金)12:00〜18:30
5月3日(土)11:00〜18:30
5月4日(日)11:00〜16:00
※最終入場は閉場の30分前まで
会場:
銀座大黒屋ギャラリー(東京都中央区銀座5-7-6 銀座大黒屋ビル6F)

写真家・HASEO HASEGAWA
X:HASEO HASEGAWA

モデル:えなこ
X:https://x.com/enako_cos