
東京都は、都内CO2排出量の約3割を占める家庭部門からの排出削減に向けて、都内住戸の約半数を占める賃貸住宅の断熱・再エネ利用を強力に推進しています。それに伴い、賃貸住宅の改修促進を目指したイベント「断熱改修ブーストアップ!イベント&相談会」が8月27日、東京・シティホール&ギャラリー五反田にて行われました。
本イベントでは、賃貸住宅の断熱性能向上による健康・家計・環境へのメリットや快適な住宅の選び方など、入居者側に役立つ情報と、賃貸住宅のオーナーに対する、省エネ性能診断や断熱改修などを伴走支援する「コンシェルジュ」や補助制度などについて紹介しました。
また、イベントのスペシャルトークステージでは、ゲストとして天野ひろゆきさん(キャイ~ン)、慶應義塾大学名誉教授、一般財団法人住宅・建築 SDGs 推進センター 理事長の伊香賀俊治氏、新百合ヶ丘総合病院救急センター センター長の伊藤敏孝氏(VTR出演)、関根麻里さんが登壇しました。
今回のスペシャルトークステージ「断熱でここまで変わる!賃貸選びの新常識~健康・お財布・地球にやさしい都の賃貸革命~」では、「熱中症の現状と在宅の断熱との関係」や「賃貸住宅オーナーを伴走支援する『コンシェルジュ』」について紹介していきました。
イベントのオープニングトークでは、天野さんは「約25年、大家をやっています。歩く不動産王と呼ばれているくらいなんですよ。今日は家を貸している側の人間として来ました。芸人としての立場は一切出さず、大家さん目線です!」と語ります。一方、関根さんは「子育て側、住む側目線で勉強させていただきます」とコメントを残しました。
ここからはふたりの実体験などを交えながらのトークに。「最近、気温が40度を超えても驚かなくなってきた。大家として断熱などの問題について考えないといけないという意識がある」と天野さん。関根さんも、「家のカーテンを選ぶときも、断熱や遮光などを考えています。子どもだけではなく、72歳になった父もいるので」と父・関根勤さんのエピソードも交えながら振り返りました。
天野さんが語ったように、連日の猛暑による熱中症について、多くの方が対策をしていると思います。また、熱中症は屋外だけではなく屋内でも起こりうる問題。そこで、「熱中症の現状と在宅の断熱との関係」というテーマでトークがスタート。新百合ヶ丘総合病院救急センター センター長の伊藤敏孝氏がVTRにて登場し、屋内での熱中症解説をしてくれました。
「熱中症の40%は住居で起きている」「65歳以上の熱中症はおもに自宅で起きており、19歳から30歳の倍」「70代から熱中症死が増える」「例年より今年は重症の患者が多い」とデータを交えて解説。室内でも部屋によって温度差があり、ヒートショックが起こることがあるそうです。そのため、水分や塩分補給はもちろん、エアコンもちゃんと使用したほうがよく、また部屋に関しては窓を二重窓にすることでも対策ができるとのことです。
ここでクイズコーナー「教えて!伊香賀先生 断熱〇×クイズ」として、慶應義塾大学名誉教授でもあり、一般財団法人住宅・建築 SDGs 推進センター 理事長の伊香賀俊治氏が登場。伊香賀氏からのクイズに天野さんと関根さんが答えるという内容となっております。
「賃貸住宅の断熱性への不満1位は結露である」(答えは×で1位は「底冷え」)、「医療費は断熱性能の違いによって200万円以上も変わる」(答えは◯。ただし30年間のなかでというひっかけ問題で、約270万円も変わるとのこと)、「世界と比べて日本の住宅の断熱性能基準はとても厳しい」(答えは×)、「住居希望者はオーナーに確認しないと断熱化されているかわからない」(答えは×で、2024年度から賃貸時の省エネ性能ラベル表示が努力義務化されている)といった問題が出題されました。
続けて、「賃貸住宅オーナーを伴走支援する『コンシェルジュ』」の解説コーナーへ。「コンシェルジュ」とは、賃貸住宅の所有者を、住宅の省エネ性能診断前から断熱改修や再エネ設備導入まで一貫して支援する事業者のこと。都は、賃貸住宅の脱炭素化を促進するため、補助事業に加え、今年度から新たに、所有者や物件、診断および改修などに係る情報・知見などを有する「コンシェルジュ」を賃貸住宅の物件へ無料で派遣し、オーナーを伴走支援しているとのことです。
この制度には天野さんも「知らなかった! これはいい! 悪徳リフォーム業者の話も最近よく聞くので、都がやっているなら安心」と大絶賛でした。
イベント終了時のコメントでは、天野さんが「こんなにガッツリ大家として仕事をするとは思いませんでした。特にコンシェルジュ制度が素晴らしい。自分のマンションのウリがひとつ増えると考えたら貸す側も借りる側もWin-Winです。大家仲間にも知らせたいと思います」と、再度太鼓判を押します。関根さんも「断熱がこんなに健康面に影響するとは知らなかった。家族もいるので、断熱や省エネ対策は意識していきたいと思います」と締めくくり、本イベントは幕を下ろしました。
取材・加藤大樹